クロスに力強いボールを打ちます。
私(田中)は年甲斐もなくそのボールに飛びつき、
悲劇に見舞われます。
「グウォッ~」と獣のような声をあげ、
バタンとコートに倒れ込んだのです。
激痛は、ひざから。
エビのようにくの字に腰を曲げ、
左ひざを両手で抱えたまま身動きが取れません。
休日だったので、
5面横並びのコートは満員御礼。
ただならぬ様相の私(田中)を心配し、
「大丈夫か?」
と、プレーをしていた大半の人が
駆け寄ってきます。
気丈にふるまい、
「だっ、大丈夫です…」と答える私(田中)。
ですが、事態は深刻。
一人で立つことさえできない私(田中)は、
17歳男子ジュニアの肩を借り、
ラケットを杖代わりにして歩くのがやっと。
ゆっくり、ゆっくり、クラブハウスに戻ります。
「まずいな…」
夜便の飛行機で、仕事先に移動する
私(田中)の胸には不安が広がります。